『下宿人』THE LODGER
(1927) イギリス作品 80分監督 アルフレッド・ヒッチコック
出演 アイヴァ・ノヴェロ、ジューン、マリー・オールト、アーサーチェスニー
ヒッチコック・サスペンスの誕生を告げる歴史的名作!ヒッチコック第3作にして初のサスペンスだが言葉(字幕)に頼らず映像で語るヒッチコックらしい技法が随所に示され、見応えのある傑作となっている。物語は、霧のロンドンの連続殺人事件をめぐって展開。女性犠牲者に下から照明をあてて金髪の輝きを強調したり、二階を歩き回る下宿人を一階の天井を透明にしたセットで下から撮影して音を演出したり。ユーモラスなやり取りもあり、初期のヒッチコックを堪能できる。お馴染みのヒッチコック自身の登場もすでにあって、冒頭の通信社の記者と、下宿人が追いつめられる場面の野次馬として姿を見せている。
『マンクスマン』(1929 英) 83分
監督:アルフレッド・ヒッチコック
原作:サー・ホルン・ケイン
出演:カール・ブリッソン、マルコム・キーン、アニー・オンドラ
サー・ホルン・ケインの有名な文芸小説を映画化した、ヒッチコック最後のサイレント作品。「マンクスマン」は、アイルランド海に浮かぶマン島の住民という意味。マン島の幼馴染み三人が不運な三角関係に陥って追い詰められていく物語が、水車小屋の挽臼や、夜の海面とインク壺の二重像などを象徴的イメージとして巧みに使いつつ、一貫した心理的緊張感を持って描かれている。
『ふしだらな女』EASY VIRTUE
(1928) イギリス作品 60分
監督 アルフレッド・ヒッチコック原作 ノエル・カワード
出演 イザベル・ジーンズ、フランクリン・ダイアル、イアン・ハンター、ロビン・アーヴィン
当時の人気作家ノエル・カワードの戯曲の映画化作品。若い画家と不倫の罪で離婚となった女ラリータは、その後南フランスで若いイギリス紳士ジョンと知り合い、再婚する。が、不運な巡り合わせの醜聞の果てに…。南フランスの華やかな避暑地リヴィエラを舞台しした点で、後年の『泥棒成金』(55)を予知させる感もある。ヒロインと青年貴族との結婚の成立を電話を盗み聞きする交換手の表情だけで示すなど、ヒッチコックの映画的技法の冴えを示している点でも興味深い作品。
『農夫の妻』THE FARMER’S WIFE
1928年 イギリス作品 97分
監督/アルフレッド・ヒッチコック原作/イーデン・フィルポッツ
出演/ジェイムソン・トーマス、リリアン・ホール=デイヴィス
イギリス南西部、デヴォンシャーの農夫スウィートランドは、娘を嫁がせやもめ暮らしをしているが、後添えを得ようと決め、婚活を始める。家政婦のミンタと相談して、四人の女性を候補に求婚するが…。サスペンスの要素はないが、主人公の愛すべき愚かさを温かい目で揶揄しつつ軽妙に描く田園喜劇風の語り口は、ヒッチコックのコメディタッチの芽生えを見てとれる。
エルンスト・ルビッチ監督
『結婚哲学』 The Marriage Circle
1924年 米 ワーナー・ブラザーズ作品 85分
監督/エルンスト・ルビッチ
出演/アドルフ・マンジュー、マリー・プレヴォスト
大正十三年度キネマ旬報ベストテン芸術的優秀映画の部第二位。有閑紳士淑女のお洒落な恋愛遊戯。機智と皮肉に富んだ演出で、映画の神様といわれたルビッチが描く艶笑喜劇の傑作。
『ウィンダミア夫人の扇』 Lady Windermere’s Fan
1925年 米 ワーナー・ブラザーズ社作品 64分
監督/エルンスト・ルビッチ
原作/オスカー・ワイルド
出演/メイ・マッカヴォーイ、バート・ラティル、アイリーン・リッチ
オスカー・ワイルドの舞台劇を映画化。ロンドン社交界を舞台にスキャンダラスな母親と、それを実母と知らない高貴な娘を中心に繰広げられる物語。
『パッション』 Madame du Barry
1919年 独 作品 90分
監督/エルンスト・ルビッチ
出演/ポーラ・ネグリ、エミール・ヤニングス
ルイ15世の寵愛を一身に集めたデュ.・バリ夫人を描いた、華麗な貴族階級の愛欲絵巻。ルビッチのドイツ時代の作品。
D・W・グリフィス監督短篇
(長編は女優リリアン・ギッシュ主演のカテゴリーに)
『女は嘲笑した』
(1911年)
アメリカ/監督:D・W・グリフィス/17分
医者の留守中に医者の妻と娘が強盗たちに襲われるが、強盗の恋人だった女が医者にそのことを告げ、妻と娘は危機一髪で救われる。グリフィスお得意のサスペンス無声短篇。
『罠にかかったサンタクロース』
1909年 米(18分)
監督/D・W・グリフィス
貧しさから家を去った父親が、無事帰還するまでを描いた、映画の父グリフィスの初期名短篇。
『ドリ-の冒険』
1908年米(12分)
監督/D・W・グリフィス
小さな女の子ドリ-がジプシーに誘拐されて両親のもとへ戻るまでのストーリーを音声も文字もなく画像だけで見事に語った映画の父グリフィスのデビュー作。
『先史時代』 Brute Force
1913年米(30分)
監督/D・W・グリフィス
出演/ロバート・ハーロン、メイ・マーシュ、ウィルフレッド・ルーカス、チャールズ・ヒル・メイルズ
「映画の父」D・W・グリフィス監督による、発明家の青年が見た先史時代の夢の話。同じ男(R・ハロン)と女(M・マーシュ)が現代と原始時代を行き来するコメディ
E・S・ポーター
『アメリカ消防夫の生活』 Life of an American Fireman
1903年米(7分)
監督/E・S・ポーター
消防馬車を何台も連ね、火事場に入って親子を助ける消防夫たちの話。消防士の日常の記録撮影とスタジオでの撮影を合わせて構成。同じシーンを別の角度から撮影して編集した初期の作品。
『大列車強盗』 The Great Train Robbery
1903年米(11分)
監督/E・S・ポーター
強盗団が列車を襲ってきた!馬と列車と拳銃と、西部劇がここに誕生!「アメリカ映画のパイオニア」E・S・ポーターによる、アメリカ映画では初めてといえる本格的な筋立てを持った作品。
『鷲の巣から救われて』 Rescued from an Eagle’s Nest
1907年米(8分)
監督/J・サール・ドーリー E・S・ポーター監修
出演/ヘンリー・B・ウォーソル、ミス・アール、ジニー・フレイザー、D・W・グリフィス
鷲にさらわれた赤ん坊を救出するお話。D・W・グリフィスの映画俳優デビュー作。舞台装置家ロバート・マーフィの手による大鷲とその大鷲が赤ちゃんをさらう様子は見事。
『チーズトースト狂の夢』
(1906年)
アメリカ/監督:エドウィン・S・ポーター/8分
チーズトーストとワインが大好きなおじさん。すると…あらら、世の中がぐるぐる回るぞ!